岩手ノコギリ事件に対して、秋元康が何もコメントしなかったことに多くの批判が寄せられた。一方で、秋元康は事件後の最初の楽曲で事件に応答するのではないかという期待が寄せられた。
そのなかでリリースされた『心のプラカード』は、残念ながら期待に応えるような楽曲ではなかった。
そしてマスコミから事件についての報道が消えたころに『希望的リフレイン』がリリースされた。
『希望的リフレイン』で歌われる「終わらないリフレイン」、それはニーチェの「永劫回帰」やフロイトの「抑圧されたものの回帰」を持ち出すまでもなく悪夢的なものであるだろう。事件後の入山、川栄が「終わらないリフレイン」に苦しんだ(苦しんでいる)ことは想像に難くない。
「終わらないリフレイン」を「希望的リフレイン」に変えること。そのために、何度も同じ力強いフレーズを繰り返すこと。この曲はただそれだけのために存在する。
その結果として、神曲という形容がピッタリな『希望的リフレイン』が生まれた。
『希望的リフレイン』の印象的な振り付けについても触れておくべきだろう。多くの人の記憶に残るのは「手で何かを振り払い」、「何かから逃げるように走る」振りなのではないか。あたかも手でノコギリを振り払い、走って逃げ出すような振り。
『希望的リフレイン』は振り付けにも岩手の事件の傷が刻まれている。
あいまい
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